「お代は要りません。避難を」 津波の避難指示が出た宮城沿岸部のびっくりドンキー 東日本の災禍乗り越え、マニュアル超えた対応

伊藤 大介 伊藤 大介

トンガ沖で起きた海底火山の大規模噴火の影響で、2022年1月16日未明、東北を中心とした太平洋沿岸に避難指示が出ました。津波注意報が発令された宮城県多賀城市では、ハンバーグレストラン「びっくりドンキー多賀城店」(宮城県多賀城市八幡)が客に「お代は要りませんので」と速やかな避難を求めたことがSNSで話題になっています。

当時、客として店内にいたまな(@ron_lily0126)さんがTwitterで「とにかく避難して下さいと人命を優先する従業員さんには頭が下がります。感謝しかありません」とつづると、「素晴らしい対応」「3.11の津波やばかったからな…」「経験してるからこそ出来る」と称賛の声が寄せられ、30万件のいいねが付きました。まなさんとびっくりドンキーを展開するアレフ(札幌市)に聞きました。

警報鳴るや店内慌ただしく

まなさんは、15日午後11時15分にびっくりドンキー多賀城店へ来店し、チーズカレーバーグディッシュの300gを注文しました。ちょうど食べおわった1時間後の16日午前0時15分ごろに警報が鳴り、一息つく間もなく店内が慌ただしくなったといいます。

ーー店員からどんな言葉をかけられましたか?

「『多賀城市より八幡地区が避難指示が発表されました。本日お代は要りませんので』と速やかに退店をお願いされました。私達も社会人ですので、『代金を支払います』と言いましたが、『本当に代金は要らないので、申し訳ないんですが、今日はこれで営業を終了します』と言われました」

再び来店し、支払いの意思伝えるも、「代金は頂けません」と店側辞退

まなさんは感謝を伝えようと、店が再開した16日午後に再び店を訪れました。迅速な避難誘導の礼を述べ、前回注文分を払う旨を伝えましたが、「会社の決まりで人命優先により代金は頂けない」「伝票も破棄したので本当にお受けできない」と丁重に断られたといいます。「店長さんにはお会い出来なかったのですが、よろしくお伝え下さいと従業員様に話してきました」

運営会社「命を最優先する行動だった」東日本の津波被害乗り越え

多賀城市によると、びっくりドンキー多賀城店がある多賀城市八幡地区は仙台港に近く、2011年の東日本大震災で津波による浸水被害に遭ったエリアです。

びっくりドンキーを展開するアレフに取材すると、店舗運営マニュアルでは緊急時、命の安全を最優先にするよう求めています。多賀城市が出した避難指示は、「避難レベル4」に相当し、店舗を臨時休業し、避難することが定められています。一方、客に飲食代金を支払ってもらうかについて、マニュアルに記載はありません。今回の多賀城店の会計より避難を優先した行動について、アレフは「命を最優先するために取った行動だと理解しています」と評価し、「適切な対応だったと思っています」としています。

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東日本大震災の災禍を乗り越え、マニュアルを超える対応を取ったびっくりドンキー多賀城店。迅速な避難誘導をたたえ、「私も多賀城店行こう」という声も寄せられています。

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