「お昼寝中って、子ども寝てるから休憩みたいなもんでしょ」は大間違い 保育士という職業への認識改善を求める声が話題に

中将 タカノリ 中将 タカノリ

子どもたちが寝ているお昼寝の時間も事故防止や体調の急変に対応できるよう気が休まらない…保育士という職業への認識改善を求める意見がSNS上で大きな注目を集めている。

件の投稿は認可保育園園長のひまわりさん(@himawari_hoiku)による「ハッキリ言う…『お昼寝中って、子ども寝てるから休憩みたいなもんでしょ』と言われた事がある。でも大間違い。0歳児クラスは5分に1回SIDSチェック。1歳児は10分に1回。ちなみに園で死亡事故が起きる時間帯No.1は午睡中。保育の現場は、子どもの命を預かっている場所だという事を広めたい。楽じゃない」というもの。

1歳~2歳児に多く見られるSIDS(乳幼児突然死症候群)を予防すべく、午睡の時間も保育士たちは分刻みのチェック体制を整えているという。そんな保育士という仕事のハードさと重要性をわかってほしいというひまわりさんの切実なうったえに、SNSユーザー達からは

「うちの園、この1年で2回も午睡中に救急車呼んでます。午睡チェックをしっかりやっていたから早い対処が出来ました。呼吸のチェックだけじゃない。呼吸以外にも異常は起きます。うちの園の職員は実践で鍛えられ、かなりの連携プレーができるようになってます。」
「テクノロジーでちょっとでも楽にならんかな。でも、そういう、『休憩みたいな…』って人に限って、『子供にセンサーつけるなんて、愛が云々』っていうのかな?と想像」
「『お昼寝って子ども寝てるから休憩タイムでしょ?』って思ってる人が寝てる子車に置いて出かけたり、寝てる子家に置いて出かけたりするんじゃないかな?ってふと思う今日この頃…」
「主人に『子どもと遊んでるだけでお金もらえていいね』といわれた時、殺意が目覚めたのは内緒ですwそんな主人は、YouTubeみさせて、自分はゲームしてるのに、イクメンらしいですよwwwでも『子どもに、先生って働いてるの?』と言われたら、保育士として、最高の褒め言葉だと思います!」
「それを理解のない職場の上司や夫から言われたことがあります 我が子が寝ているからといって休まるわけない、ぐったりして一緒に寝落ちしちゃう時はあっても、慌てて起きて自分の子!大丈夫?!ってなるんですよ…他人のお子様、複数いる中、全力で働く親のために保育士さんありがとうございます」

など数々の賛同の声が寄せられている。

投稿したひまわりさんにお話をうかがってみた。

--SIDSチェックとは、具体的にどんなことをするのでしょうか?

ひまわり:SIDSを防ぐために、お昼寝時間に子どもの様子を定期的にチェックすることです。0歳児クラスは5分に1回、1歳児~2歳児クラスは10分に1回の頻度で、呼吸状態はどうか、うつぶせ寝など危険な寝相になっていないか、タオルケットが顔にかかっていないかなどをチェックします。3歳児クラス以降は、園によっては実施していないところもあるようですが、大半の保育園で15分に1回程度の頻度でSIDSチェックをやっているかと思います。

また部屋の明るさも重要で、暗すぎる場合は子どもの顔色が見えにくくなる為、カーテンなどで明るさを調整します。私が保育士になった10数年以上前までは、SIDSチェックに対してあまり神経質になっていなかったような気がしますが、保育園の午睡中に子どもが亡くなってしまう事故が起きたことがテレビなどで報じられると、保育業界も一斉にSIDSの周知徹底に動き出したように感じます。一昔前は今ほど神経質ではなかったとは思いますが、それでもお昼寝中の子どもに何かが起こってもすぐに対応できるように、保育士の休憩は保育室で取るのが常識でした。

--休憩と言っても気が休まりませんね。

ひまわり:チェックと言ってもただ見ていればいいのではなく、必ず記録に残す必要があります。監査の指摘事項にもなっています。うつぶせ寝が寝やすい赤ちゃんの場合、仰向けに直す必要があるのですが、ほとんどの場合目を覚まして泣いてしまうので、改めて寝かしつけをする必要があります。再入眠を促すための寝かしつけはかなり難しく、寝相を変えられたことで赤ちゃんが泣くので、連鎖反応的に他の赤ちゃんも起きてくるなんて事は日常茶飯事です。

結果、保育士は休憩が取れなくなることが多いです。子育てをしている方は想像できるようですが、子どもを育てたことがない方にはあまり想像できないようです。私も子育ての経験はないので保育業界に携わっていなければSIDSのことなんて知らなかったですし、お昼寝の時間が大変なんだなんて想像も出来なかったと思います。今回のツイートを通して、多くの方にSIDSについて知って頂ければ幸いです。

--この他にも、あまり知られていないと感じる保育士の業務、ご苦労はありますか?

ひまわり:新型コロナウイルスが流行ってから、おもちゃや壁、棚、ドアノブ、椅子などなど園にあるあらゆるものの消毒は、かなり負担が大きい業務です。コロナ以前も消毒作業はしていましたが、感覚的に5倍くらいはやっているように思います。

当然、日中の活動中や給食中に行う事は不可能なので午睡時間にやることになります。上述した通り午睡時間中はSIDSチェックがあり、さらに日誌などの各種書類、さらにさらに消毒作業となると午睡時間(12時~15時)は大忙しです。午睡時間は各年齢によって違いますが1時間~2時間程度になります。また子どもが毎日全員寝るとは限らないため、起きている子の対応もします。またトイレ掃除や洗濯物など、子どもが安全に衛生的に過ごせる環境を整えるための仕事も多数あります。

他にも、業務ではないのですが、備品の自腹購入、サービス残業の日常化、有給休暇が取りずらい等の過酷な労働環境や支配的な性格の園長との軋轢で多くの保育士が苦労し、悩んでいます。

--現状の保育士という職業に対する世間の評価や報酬についてどのように感じておられますか?

ひまわり:保育士の仕事がいわゆる「やりがい搾取」に当たるかどうかは何とも言えませんが、たくさんの感謝の言葉を頂き心の支えにする一方で、まだまだ「子どもと遊んでいるだけでお金もらえていいね!」や「赤ちゃんは可愛いから癒ししかないよね!」などと、かなり勘違いした意見をいただくことも事実です。

報酬については国からの公定価格(補助金)に強く依存するので簡単には上がりません。どんな仕事にも大変さがあるのは重々承知していますが、それでも子どもの命を守る仕事だという点を考慮すると明らかに安い給料だと言わざるを得ません。これは保育士に限らず福祉業界全体の問題だと思います。

--これまでのSNSの反響へのご感想をお聞かせください。

ひまわり:「SIDSを知らなかった!」「SIDSチェックをやっているなんて知らなかった!」「お昼寝中も忙しいんですね。子どもの命を守ってくれてありがとう!」など、保育士を応援してくれる内容や感謝といった内容がほとんどでした。今回のツイートだけではなく、今までに発信している内容を少しでも多くの方に知って頂き、保育業界の健全化が加速化することを心から願っています。

◇ ◇

保育士が「子どもの命を守る職業」だという認識はまだまだ社会に不足していると思う。ひまわりさんは日ごろからSNS上やブログ「ひまわりっちブログ」で保育業界の内情やその改善に向けた意見を発信している。「子どもは国の宝」という。子どもを持たない方にもぜひ関心を持ち、多くの情報に触れていただきたい。

ひまわりさん 関連情報
Twitterアカウント:https://twitter.com/himawari_hoiku
ひまわりっちブログ:https://himawa-rich.net

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