「死んだはずの猫が戻ってきた」譲り受けた家にお礼を伝えようと車で向かうと…今度は狸に化かされたかのよう

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

多頭飼育をしていると、どうしても仲の悪い猫が出てきてしまうもの。それも男の子同士ならなおさら。

埼玉県のMさんの家のたぬきくんときゅうくんも仲の悪い猫でした。しょっちゅうタイマン勝負を挑み、家の襖に時代劇のような血しぶきがついていることもあったのだそう。

Mさんは、せっかく縁あって家族になったのだから仲良くしてほしいと願っていました。しかし、その願いは虚しく、きゅうくんが10歳目前で心筋梗塞により亡くなるまで2匹は仲良く過ごすことはありませんでした。

きゅうくんが虹の橋のたもとに旅立って49日が経ったころ、Mさんは夢を見ました。その夢に出てきたのは、虹の橋のたもとに旅立ったはずのきゅうくん。そして言ったのです。

「つぎは赤茶色でうまれてくるね」

夢とはいえ、Mさんはこの言葉が忘れられません。いつどこで生まれてくるのか、気になって仕方がありませんでした。

そして、ふと思い出したんです。それは職場のスーパーにいつも猫砂とキャットフードを買いに来る老婦人のことを。彼女はいつも、「うちのはたくさん猫がいるのよ。いつでも見に来てね」と言ってくれていました。つい先日は「子猫が生まれたの」と嬉しそう。

いつもならお客さんの誘いに乗ることはありません。しかし、この時は心が弱っていたこともあり老婦人の自宅に娘を連れて遊びにいくことになりました。きゅうくんが亡くなって約4カ月後のことでした。子猫の中に赤茶色の子がいたら、その子はもしかして…。

到着してみると、老婦人の自宅はお世辞にも綺麗とはいえない日本家屋。大丈夫かなと思いながらも子猫たちがいるという部屋に足を踏み入れます。そこには10匹ほどの子猫がいたのだそう。その中には、赤茶色の子猫もいるではありませんか。

「この子!?」

思わず大きな声を出してしまいました。すると、子猫たちはびっくりして蜘蛛の子を散らすように走り去ってしまいました。その中で隣の台所に立ち止まってこちらを見ている子が1匹。きゅうくんと同じくキジ白の子猫です。雰囲気もなんだか似ています。

娘さんが何となく気になり抱き上げると、「ぴー」っと一声鳴くと暴れることもなくおとなしくなったのです。これも何かの縁と思い、キジ白の子猫を譲ってもらい帰宅します。

家に帰ると、たぬきくんをはじめ先住猫たちはビックリ。死んだはずのきゅうくんにそっくりの猫が来たのですから、もう大混乱。たぬきくんは喧嘩をしようにも、今度は相手が子猫ですので、何もできません。本当は優しい子ですから。

子猫はというと、最初から自分の家かのようにくつろぎ始めるではありませんか。もうこれは間違いがない、きゅうくんが戻ってきてくれたんだ!柄はきゅうくんより少し白が多めだけど、それは急いで毛皮を着替えようとしたからだろうと結論付けられました。

この子猫は、大腿部の模様から「雪兎(ゆと)」と名付けられます。なんとなく、雪の中からウサギがひょっこり顔を出しているように見えるからです。雪兎ちゃんはMさんと娘さん、たぬきくん始めとする先住猫に可愛がられ大きくなります。

Mさんの望みは、きゅうちゃんとたぬちゃん仲良くやってほしい。その願い通り、雪兎ちゃんはたぬちゃんとも仲良く過ごします。雪兎ちゃんは女の子ということもあって、たぬちゃんがメロメロみたい。

1年も経つと、雪兎ちゃんはきゅうくんの生まれ変わりだと隠すのを止めました。きゅうくんのクセをするようになったのです。それは、何かの上で香箱座りをすること。リモコン等がないと落ち着かないみたい。これ、きゅうくんもよくやっていたんですよ。

こんなあからさまに「帰ってきたよ」とやられると、笑うしかありません。そして、あの老婦人に改めてお礼を言いたいと考えるようになりました。

雪兎ちゃんが2歳になったころ、Mさんは再び老婦人の家を訪れることに。今度は以前とは違った気持ちです。雪兎ちゃんが元気なこととお礼を伝えよう。弾む気持ちで車を走らせます。

記憶を頼りに老婦人の家にたどり着くと、思わぬ出来事が。日本家屋があった場所に何もないのです。Mさんは呆然と立ちつくします。まるで狸に化かされたかのよう。

帰宅すると、雪兎ちゃんとたぬきくんはくっついて寝ていました。たぬき…あれ?もしかして…。たぬきくんはちらっとMさんを見ると、また夢の世界に旅立ちました。

まさかね…。

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