「せっかく作った品、廃棄よりも…」北陸道立ち往生で、積荷の寿司や菓子を配った企業に称賛の声

広畑 千春 広畑 千春

 大雪の影響で1月9日から約60時間にわたり最大約1500台が立ち往生した北陸道。NEXCO中日本や災害応援の自衛隊が復旧に向けて昼夜問わず作業を続ける中、素早い対応で積荷のお寿司とお菓子をドライバーたちに配った会社に、称賛の声が次々と寄せられています。

 その一つが、富山名産の「ますのすし」を製造販売する「源」(富山市)。同社のトラックは関東地方に向けて9日午後に出発したものの、小矢部ICを入って間もなく立ち往生に遭遇しました。本来なら取引先に到着する予定だった10日の朝になっても解消の目処が全く立たない中、「賞味期限は2日間。どうやっても間に合わないなら、困っている人たちに食べてもらった方が良いのでは」と取引先の担当者と話し合った結果、その日の夜にお寿司を配ることにしたそうです。

 さらに菓子メーカー「シャトレーゼ」(山梨県甲府市)もドライバーからの連絡を受けて、社長が積荷のいちご大福やロールケーキを配ることを指示。「どれも生菓子で賞味期限は短い。見通しも立たず、仮に到着できたところで廃棄せざるを得ない可能性の方が高い」と広報担当者。

 普段から工場で出た規格外の商品(品質に問題はないが、形崩れ等がある)は地元・山梨のフードバンクに寄付しているといい、「寒ければカロリーも使います。お店で商品の到着を待っているお客様にはご迷惑をおかけしてしまいますが、先が見えない不安な中でも甘いお菓子を食べれば少しほっとして頂けるのでは…と考えました」と話します。実は2014年2月に山梨県が大雪に襲われ、一時孤立状態になった際も現場の判断で積荷のお菓子を配った経験があったといいます。

 また、エクレアなどの生菓子を配った栄屋乳業(愛知県岡崎市)も「これまでも自社商品であれば、台風などで配送が難しくなった場合には配らせて頂いています。26年前の阪神・淡路大震災の時もです。せっかく作ったお菓子ですから、棄てるなら誰かに食べて頂ける方が嬉しいですから」と話します。

 今回の立ち往生では、自衛隊員がお弁当を配り、NEXCO中日本の職員もガソリンを持って車を回り、沿道のお店が温かい食事を提供したり、ドライバー同士も助け合ったりした結果、幸い負傷者は出ませんでした。

 立ち往生の発生を報じたネットニュースのコメント欄には、年末の関越道の例を引き合いに「なぜこんな時に」などと非難するものもありましたが、今回は雪の多い富山でも、35年ぶりという大雪。ますの寿司の源の担当者も「今までにはない事態。2、3年前に年末年始に大雪があったこともありましたが、ここまでの交通障害はなかった」といいます。

 そんな不測の事態でも「困っている方の力に少しでもなれたなら嬉しい」「食品会社としてこういう時に役に立てるのは本望」と各社。どれだけ備えても、残念ながら起こりうるのが災害です。検証はもちろん必要ですし大切ですが、もし起きたときに何ができるか…。こんな温かな教訓も一緒に、伝えて行けたら素敵ですね。

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